著者にインタビューする必要があって、あわてて読む。「このミス」追っかけではないもので、世評の高さは承知しつつも、手を出さなかった作家。キャラクターの設定やプロットの構成力が緻密で、複層的な物語を重ね合わせるエンタテインメント力にいまさらながら驚く。医療ミステリを前面に出し、賞狙いを意識したかのような「バチスタ」のほうがストレートで読みやすいが、背景にある医療問題をより鋭く提示しているのは『ルージュ』のほうだろう。
著者本人は、茶目っ気のある笑顔が印象的な童顔の人で、頭の良さは窺わせつつも、それを誇示することがなく、インタビュアーのやや無理筋のテーマ設定にも、旺盛なサービス精神で応えてくれた。そもそも文学畑でも医療畑でもない少部数の媒体に、あの金額の謝礼で、90分間取材に応じてくれるというだけでも、ありがたい。
これからもそうなのかはわからないが、「読んでいただいて、楽しんでいただいて、少しだけ医療の危機に関心をもっていただくだけで嬉しい」という謙虚な姿勢に溢れていた。
本職は救命救急医ほどではないにしても、忙しいには違いない先進医療現場の病理専門医。短期間にあれだけの量を書けることにまず驚くのだが、作家としての資質や才能以上に、読者を得ることの悦楽にハマってしまったということもあるのではないか。
インタビューが終わると、取材スタッフが全員、体の中の「臓器」の模式図を書かされる。宝島社から秋に出る子ども向けの本の関連なのだが、「意外とみんな自分の体の中のことを知らないものなんだよね」と。医学の基礎知識を低学年から教えることが、医療への社会的関心の基盤を形成し、それが結果的に医療の危機を救うことになるというのが、どうやら持論らしい。
ついでに、『バチスタ』の映画も見たが、これは平凡。竹内結子のぼぉーとした演技は、主人公のキャラクター設定によるものだとしても、最後までわざとらしい。この人、恋愛もの以外はまだまだだなあ。
この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。
珍しくここにあるのは 皆読みました