昨日。午前中の取材は編集の勘違いでアポが取れていなかった。来週に延期。現場まで行って、うーむと唸りながら帰宅。
仕事はたまっていたのだが、『警官の血』を読み始めたら止まらなくなって、上下巻778ページを一気に読了。谷中あたりが舞台というのがいい。さすが作者の土地勘のあるところ。昭和30年代の古い地名を地図で確認しながら、読み進む。戦後期の世相や警察組織の様子なども、よく調べていることがうかがえる。谷中の五重塔のことは知らなかった。今度、主人公が歩いた道をたどりながら、散歩でもしてみよう。
二代目の警察官は地域交番の駐在を志しながら、左翼過激派への潜入捜査を命じられる。警察のスパイ。ワタシの政治信条的にはムムムとなるところだが、PTSDを発症するまでに至った潜入捜査官の苦渋がかいま見えて、それはそれで権力の下で働く人間の葛藤はよく描かれている。事実関係を掴んだことはないが、たしかに学生運動や労働運動への公安の潜入捜査は行われ、それなりに実績を挙げてはいたのだろう。
三代目は、最初の配属が上司の腐敗を暴く内偵捜査。なんでまた。このあたりは、ハリウッドの警官映画を観るかのようなタッチだ。実際、こういうことってあるのかなあと訝しく思いつつも、面白く読めた。代を経るごとに、警官の血も濃くなるのか、ふてぶてしさを増すラストがいい。
佐々木氏の小説は初めて(ノンフィクションで、キューバ革命のカストロを描いたものは読んだことがある)だが、なかなかグッと来る作風ではある。高村薫が直木賞を取っているのだから、この人が取ってもおかしくはない。
この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。