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ひろぽん小石川日乗

心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくれば

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「ひろぽんの南イタリア旅行記」はこちら。

2007-04-02 (Mon)

[life] 本郷館

土曜日、菊坂あたりをカメラをぶら下げて散歩していたら、60歳がらみのおじさんが、やはりデジイチに望遠レンズをつけて、なにやら道路の向こうを撮影している。目が合ったら呼び止められた。こちらもカメラをぶら下げていることに気づいたのだろう。

「あれが、今日最後ですよ」という。彼のレンズの先を見やると、そこには「本郷館」崖の上に立つ木造三階建ての下宿館で、明治のころの建造だという。このあたりの名物の一つ。それがどうやら取り壊しになり、見納めだから撮影しているのだという。少し話し込んでいると、「ちょっとお時間いいですか」と私を道路の向こうに誘う。どうやら本郷館の真下に彼の家があるらしい。そこもまたゆうに50年以上は建っているようにみえる木造三階建ての小さな家だった。本郷館

玄関に入るとおじさんはすぐに額入りの写真を持って出てきた。それは昭和30年2月撮影の本郷館の姿。その日付は私が生まれたのと同じ年、同じ月ではないか。本郷館の姿は今とほとんど変わらない。違いといえば、あたりにあった背の高い細い木々がすっかり取り払われているぐらいだ。

おじさんはさらに「あと5分ね」といいながら自分が撮った本郷館のアルバムの一部を見せてくれる。自宅の3階からとか、館の正門のところからとか、夕陽を受けた表情とか……。アルバムをくくりながら、この界隈の変化の様子をいろいろと話してくれる。わざわざ写真に撮るくらいだから、昔のものが次第に失われていくのは、むろん悲しいことなのだろうが、おじさんの表情はさほど悲しそうでもない。たんたんと宿命を引き受けるふうである。

解体されたその後には、おそらくマンションが建つのだろう。「お宅もそのついでに家を建て替えたら」と私は余計なことを言う。「ばあさんと二人しかいないもんで、今さら立て替えられますか」と、彼の口調には少しべらんめぇな口調が混じる。代々このあたりの人なのだろう。

私もお礼にといってはなんだが、ちょうど、デイパッグの中に入れていた、キューバの写真を見せてあげた。おじさんの感想といえば、キューバの風景そのものについてというより、「これは、シャッタースピードは1000分の1ぐらいかな」とか、やたら写真技術の評が多かったけれども。

30分ばかし話をして、互いに名も名乗らず、そこで別れた。私は東大のほうまで散歩を続ける。こんなふうに、見知らぬ人にもふと声をかけてしまう、下町の人々の気風は、古い木造住宅の解体と新住民の移入と共に失われていくのかもしれない。そう思うと、少し寂しい。


2007-04-18 (Wed)

[book] 最近買った本

他に書くべきほどのこともないので、最近買った本リスト。画像の説明画像の説明

1〜3は多和田本。最近作はみんな買っている。5〜7は写真集。最近、ぼぉーと写真集を眺めるのが好きになった。偶然だがいずれも<東京>を撮っている。10は帝政ロシア時代からあったといわれるソ連収容所の研究書。ピュリツァー賞受賞。13は岩波の叢書。いちおう揃えようかと思っているのだが……。


この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。