来年早々のキューバ行に備えていくつか関連本を蒐集。キューバといったら、私の場合やはりまずはカストロでありチェ・ゲバラである。ヘミングウェイや葉巻やラム酒、あるいは音楽や野球やバレーボールへの関心は副次的だ。キューバ革命については、学生時代に一通り「学習」した記憶があるが、反帝反植民地闘争の旗手としての理想は認めるものの、革命後の社会実験が結局ソ連型社会主義を踏襲したということで、それ以上の興味がわかなかった。
あらためて、後藤政子・樋口聡の『キューバを知るための52章』で最新(といっても2002年前後)の状況をおさらい。さらに佐々木譲の『冒険者カストロ』や、三好徹の『チェ・ゲバラ伝』で、2人の革命家の足跡とキューバ革命が世界にもたらした意味について考えてみる。
佐々木の本は三好の本が底本になっているのだろうか。あるいは両者に共通するネタ本があるのか。紹介されるエピソードがよく似ている。ただ、佐々木著の中にある、カストロのハバナ大学時代の活動についての話は、私にとっては目新しいものだった。1950年代の反バチスタ独裁闘争といってもさまざまな潮流があり、互いに激しい“内ゲバ"を展開、しかもそれは、ピストルをぶっぱなすような派手な抗争だったというのには、あらためて驚く。ラテン気質といってしまえばそれまでだが……。
キューバ革命はもはや過去のものなのだろうか。もちろんソ連型経済政策の大失敗は、たとえ米による経済封鎖やソ連の崩壊がなかったとしても、ある種、必然ではあったのだろう。だが、それになんとか耐え、サトウキビモノカルチャーから脱しえなかった過去の政策の誤りを批判的に乗り越えることで、キューバはいま有機農法や循環型社会の構築という点で先進的な位置にある──というのが吉田太郎の浩瀚な現場レポート『1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ─スローライフ大国キューバ・リポート』の骨子である。580ページもの大著なのでまだ半分しか読み切れていないのだが、農林行政の専門家としての科学的・実際的な視点が一貫しており、グローバリズムとエコロジーというテーマを考えるうえでも、勉強になる本だ。
アメリカン・グローバリズムの展開と9.11以降の反テロ戦争は、いまラテンアメリカの政治にも深刻な影響を与えている。それはむしろ米国主導の統合に対するアンチとしての、新しい政治潮流を生み出した。かつて“アメリカ帝国主義の裏庭"と呼ばれたキューバの向こうにはいま、ベネズエラ、ブラジル、ボリビアなどに反米政権が誕生している。廣瀬純の『闘争の最小回路─南米の政治空間に学ぶ変革のレッスン』は、そうした「進歩的政権」と、それを生み出しつつも、単純にはそれに吸収されない広がりを見せるラテンアメリカ民衆の政治闘争の現状を分析している。
もちろんそこに、かつてのカストロやゲバラの国境を超えた革命の理想を見いだすことも可能だが、それだけならたんなる古いロマンチシズムの再生に過ぎない。廣瀬はむしろこの本のなかで、劇場の観客のように対岸の火事としてそれを見るのではなく、自らもまたその舞台に上がることを読者に呼びかける。
むろん、アンデスを超えてラテンアメリカの新しい革命に馳せ参じよというわけではない。闘うべき敵は、絶えざる階層化・分断化の攻撃のなかで、人々がほとんど何も言挙げできない、日本のいまここにあるグローバリズムの現状だ。まだ30歳すぎたばかりの若い著者。分析の手法はむろん手垢にまみれた古典的マルクス主義でも毛沢東主義でもない。ネグリとハートのマルティチュード概念がたびたび援用されるが、著者の語り口は学者の書斎の能書きのようには聞こえず、そのアジテーションは新しい政治センスの登場さえ予感させる。
さて、むろん私とてキューバの音楽や映画にも関心がないわけではない。まだ見ぬカリブの島へのイメージは、私の場合、ヴェンダースの映画『ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ』の風景だ。そこへ行ったら、可能な限り、その雰囲気に浸りたい。そのための準備は、むしろ本ではなく、もっとCDを聞きながら、ということになるだろう。
昨年に続き、フジカラーネットサービスで年賀状を注文。写真素材は夏に撮ったベルリンのテレビ塔。ハガキ代込みで100枚11,145円なり。近所の55Stationで受け取る仕組み。
bk1が12/28まで1万円以上の書籍購入に、bk1ポイント1000点バックなどのキャンペーンをやっている。つまりは新刊が1割引になる年末セールだ。今月は欲しい本が無数にあり、総額数万円に及ぶのだが、ここはひとつ小賢しく、1回のオーダーが約1万円になるよう小分けして注文。もちろん、何回注文しても、期間内ならそのつど1000点のポイントがつく。
主に反グローバリズム(『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』スティグリッツ著・徳間書店など。それにしてもすごいタイトル!)、ポスト・コロニアリズム(『ポスト〈東アジア〉』孫 歌編・作品社など)に、社会コミュニケーション分析本(『モバイルコミュニケーション』山崎敬一編・大修館書店など)、それと米原万里の本、経済予測関連本(『日本経済の明日を読む 2007』東洋経済新報社)なんかも交えて。あ、そうだ。キューバ本では『フィデル・カストロ後のキューバ』(ブライアン・ラテル著・作品社)というのもあった。CIA分析官はカストロ後のキューバ情勢をどう見ているのか、関心がある。
さて、このうち何冊を読めるだろう。2割読めればいいほうか。たとえすぐには読めなくても買ってしまう。買っておけばなんとかなる(なにが?)と信じている。
九州大学伊都キャンパス。「九大学研都市駅」という駅があるからそのそばかと思ったら、そこからさらに車で10分かかる。まだ工学部が移転しただけで、建設途上という感じの学園都市。校舎のデザインがいま一つ。なんか根本的なところで手を抜いている感じ。「北京のお台場みたいな雰囲気」と、同行したオフィス・デザインの専門家曰く。医薬などを除きほとんどの学部があと10年ほどかけてすべて移転するらしい。
45分しか寝られずに飛行機に乗ったので、取材が終わるころにはふらふら。帰便では爆睡。
前日、期末締切というので宅配便で送っておいた請求書が、中味がA社とB社入れ違いになっていて大あわて。幸い、親子関係の会社なので、霞ヶ関と銀座の間でファイル交換してもらって落着。東京に戻ると電車の中が異様に暑い。暖房効き過ぎかと思ったら、都心は20℃もあったのね。
この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。
_ ibuski [あっはっは。名古屋方面に出張の多い私は、未だにみどりの窓口でくれる紙の時刻表を携帯してます。きわどい乗り継ぎを勝手に..]
_ ひろぽん [あ、ibuski 氏も老眼ですか。ご同輩!]