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ひろぽん小石川日乗

心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくれば

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「ひろぽんの南イタリア旅行記」はこちら。

2006-11-14 (Tue)

[life] 自殺する若者

30年ほど前、井上陽水はこう歌った。

「都会では自殺する若者が増えている。今朝来た新聞の片隅に書いていた」

最近、バタバタと小中高校生が飛び降りたり首吊ったりして死を急ぐのだが、統計上は、陽水がこの「傘がない」を書いた時代のほうが、子供たちの自殺数は大きかった。ちなみに、1974年は277人。79年がピークで380人。それから右肩下がりで数字は減っている。小中高校生人口は当時と比べて減っているから、もしかすると自殺率はいまのほうが高いのかもしれない。ただ、近頃目立って若者が自殺し始めたわけではないのだ。

陽水の歌詞からは、ある意味で当時の時代性を感じるし、別の意味では時代は変わらない、あるいは繰り返すということも感じる。

「今朝来た新聞が...」と陽水は歌うが、傘を買う金がなくても、当時の若者は新聞を読んでいた。いまふうに言えば、「Yahoo!ニュースの下の方に書いていた」となるのだろうか。

テレビで「我が国の将来の問題を誰かが深刻な顔をしてしゃべっている」のは、当時も今も変わらない風景だ。深刻に語るのはいいのだが、テレビで語るぐらいでは何も変わらないのだが。

そんなことより、陽水にとっての「問題は今日の雨 傘がない」ことだった。そして「君」のこと以外は何も見えなくなっていた。「何も見えない」といいつつ、彼は新聞を読んでいる。若者の自殺を考えている。そのあたりが、いかにも70年代の若者風ということはできる。

[movie] 10〜11月に観た映画

例によって☆5つで満点。

『散歩する惑星』ロイ・アンダーソン監督 2000年スウェーデン/フランス DVD ☆☆☆1/2

ロイ・アンダーソンは欧州TVCF界の巨匠ということだが、私は彼の1970年(日本公開1971年)の作品『純愛日記』を忘れることができない。高校時代に観た。この前、高校の同窓生たちに聞いたらみんな記憶がないという。自分的にはティーンエイジャーの恋愛もの外国作品のなかでは生涯ベストなんだがな。タイトルの「純愛」とうらはらに、当時は新鮮なセックス描写が話題になった。

その監督の劇場作品で日本公開は、この『散歩する惑星』が2本目かも。70年作品のピュアで透明感のある映像とは違って、こちらは徹底的に絵づくりにこだわったシュールな作品。人物造形はグロテスクとさえいえる。大恐慌のような閉塞状況の街で、おじさんはリストラされ、車は延々と渋滞し、自分で自分をむち打つ宗教儀式のように人々は行進し、ついには犠牲の山羊として少女を断崖から突き落とす……。テーマがあるようでいて、ないような。たぶん、ないな。終末感の漂う、奇妙で滑稽な戯画を長回しで見せられるが、不思議なカタルシスはある。出演者のほとんどが素人というあたりだけ、70年作品と共通する。

『隠された記憶』ミヒャエル・ハネケ監督 2005年フランス/オーストリア/ドイツ/イタリア DVD ☆☆☆

欧州の映画祭では批評家受けする監督らしいが、映画は難解。一歩間違えば退屈。子供の頃の小さな過ちが、他人の人生を変転させた。その報いを受けるインテリ男の話。テーマはさしずめ「存在の耐えられない不安」というあたりか。本人も気づかない人種差別意識の深層というあたりも描き込まれているが、誰にもわかるように伏線を張ってくれるような親切な映画ではないので、観るほうはモヤモヤとした感じが残ったまま。ラストの長いショットの中に、ミステリーを解く鍵があるといわれるが、それこそビデオを巻き戻してスローで観なくちゃわからないような解題の仕方はナシだろうと思う。よくわからん、というのが正直なところ。

『影のない男』メナン・ヤポ監督 2004年ドイツ DVD ☆☆☆

最近ドイツ映画をまとめて観ている。これはドイツ版『レオン』だ。アサンシン(暗殺者)のヨアヒム・クロールは一見冴えない中年男。ジャン・レノよりももっと冴えない。暗殺者を追う捜査官のほうを主人公にすればよかったのに。邦題はかなり安直だが、原題が「LAUTLOS」(英語の SILENT) だからやむを得ないか。ただ、サスペンス映画としてのデキはそんなに悪くない。

(あと、6〜7本ほどあるんだけれど、時間がないので後記する)

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]
_ baci (2006-11-15 (Wed) 00:56)

「純愛日記」とは懐かしい。「ベニスに死す」の美少年が出た(脇役ですが)数少ない映画の1本だったので日本公開されたのではなかったかしら。私もそれだけの理由で観に行ったクチですが。

_ ひろぽん (2006-11-15 (Wed) 03:46)

あっ、覚えてくれている人がいた。美少年の名はビョルン・アンドレセンですね。

_ baci (2006-11-15 (Wed) 21:55)

ついでにもう1つ。やはり陽水はスゴイと思う。だって30年以上経った今でもフット浮かぶ当時のメロディーは拓郎でも泉谷でもなく陽水ですものね、個人的には。


この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。