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ひろぽん小石川日乗

心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくれば

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「ひろぽんの南イタリア旅行記」はこちら。

2005-03-09 (Wed)

[life] 休養日

8日は勝手に一日完全休養宣言をして、6時半起床。ハードディスクにたまっているリーガの録画を1本消化してから、久方ぶりに小説など読む。昼過ぎに外出して、本郷まで歩き、喫茶店で本を読み続ける。コートを脱がせる温かい日射し。夕方から池袋で映画を観て8時過ぎに帰宅。

そのままだったら平穏無事な一日だったのだが、映画鑑賞中に電話などあった模様。帰宅後、原稿の一部直しをそそくさと。パブリシティ記事じゃないんだからさ、まったく。とブータレつつ、それを終えてせいせいと就寝。えっ、10時半に寝ちゃったよ。まるで年金生活者の老後の一日ではある。

[movie] 『ボーン・スプレマシー』@池袋HUMAXシネマズ

前作『ボーン・アイデンティティ』が面白かったんで、その続編。はぐれ系アクションヒーローもの。記憶喪失、秘密部隊、偶然の女、インド・ゴアからナポリ、ベルリン、モスクワまで至るワールドワイド性、そしてお決まりの激しいカーチェイスなどなどアクションムービーの王道はちゃんと押さえている。

ただヒットの最大要因はマット・デイモンの抑制の効いた演技と、エージェントたちとの死闘アクションだろう。前作見てないといまいち入り込めないかもしれないけれど、シリーズものってのは本来そうでしょ。前作よりやや劣るがそこそこ楽しめる。で、2作目の興行収入次第では第3作「いよいよボーンの出生の秘密が明らかに!」があるとみた。

それにしても、EU統合の時代に米CIAがなんでヨーロッパでこんなに暗躍しているのか。しかも、各国警察組織との連繋がなんでこんなにうまくいくのか。それはともあれ、仮想敵を失った国家スパイ組織は、汚職まみれで自壊していくという話。敵は内部にありだわな。(5点満点で☆☆☆)

[book] 『明日の記憶』『枯葉の中の青い炎』

共に初めて読む著者の作品。『明日の記憶』(荻原浩)は、若年性アルツハイマーにかかった、50歳の広告代理店部長の話。ほぼ著者自身の年齢でもあり、私の年齢でもある。私自身、昔から物忘れがひどい人だから、まったく他人事ではない。最初は「それってよくあるよねえ」という感じで読み進むが、主人公の病状はだんだん深刻になっていく。

昨日も散歩に出かけていて、もしもあるとき、その街並みの風景が、一瞬記憶から抜けてしまったらと想像したら、背筋が凍り付くようだった。記憶の死滅こそ、人間の本質的な死なのだ。逆に思い出の豊かさこそ、人間の生きた証なのだという本書のメッセージは、いまさらながら同意。記憶に茫漠としたベールがかかっていくさまや、自我の崩壊へのおそれの心理描写はうまい。ドラマ・映画化にも十分耐えられると思うが、逆にいうと、それだけ通俗性が高いということでもある(誉め言葉じゃないよ)。

『枯葉の中の青い炎』(辻原登)は、不思議な読後感をもたらす短編集。最初の2編は神秘なラピスラズリの石がつなぐ連作なのかと思ったが、なんかハチャメチャなストーリー展開で、ちょっとついていけなかった。しかしストーリーの破調と物語想像力の渦巻きは、おそらくこの作家の持ち味なのであろう。ザーサイとキンギョがシンクロする「ザーサイの甕」のお話など、けっこう笑える。表題作は、スタルヒン伝説に依拠しながら、もうひとつの伝説(フォークロア)をそれこそ魔法のように紡ぎ出す。南洋の島で民話を採集した中島敦の話は事実だが、そうしたノンフィクションと端からデタラメの虚構を、複雑にからみあわせながら、読者を物語のシャングリラへと誘い込む。…という狙いはよくわかるが、すっかりそこで酩酊してしまわなかった私は、感性が鈍っているのであろうか。

[life] 偶然

9日は午後から打合わせで八丁堀へ。帰路、小腹がすいたので、ときおり顔を出す御茶ノ水の立ち食い寿司屋へ寄ろうと途中下車、店の前で夕方の開業にはまだ早いことに気づく。そのとき携帯に電話があって、某誌で急遽、カード・スキミングの話を書くことに。編集者が「柳田邦男のスキミングの本、読んでませんよね」という。『キャッシュカードがあぶない』(文藝春秋)のことか。目の前にたまたま丸善書店あり。なら明日の打合わせまでに読んでおこうと立ち寄ると、平台に『アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書』なる本。アメリカ文化史は昨年のマイブーム。ふと手にとると高校・大学の先輩、MK教授が編者ではないの。嬉しくなってつい購入。偶然の巡り合わせってほど大げさなものではないにしても、丸の内線車中で小腹が空かなければ、先輩の本を買うのはもっとずっと後になっていたことだろう、というお話。


この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。