顧客のためになることをすると受け入れられ、自分が評価され、仕事が続き、会社も儲かる。一見すると美しい話だが、ただ、こういう循環が、ときとして部下や下請けをいじめることに繋がっていくんだよね。
耐震偽造の「姉歯」のケースもそうだろう。何重もの下請け構造のなかで、日々の糧を得るためだけに立ち回り、そのうち専門家としての職業に対するモラルを失い、結局すべてを失う結果になった。実は、誰もが、見ているのは直上の顧客の顔色だけで、最終顧客=エンドユーザーのことなど知ったことか、なのだ。しかし、この悪循環を糺そうとすれば、結局は、エンドユーザーの無い物ねだりとか、わがままに帰結する。「顧客は神様」だから、そのわがままのひと言が、結局、下請け構造に無理を転化させることになる。
工程の下流から上流へはい上がって、うまい汁を吸うか、下流のままで心身とも奴隷のように働くのか。そのどちらかを選ぶしかない。わが業界にもそれと似た構造的退廃はあるよなあ、という話。
小林よしのりはマンガも人柄も思想も下品なので、本を買ってまで読まないことにしているのだが、台湾旅行の準備で読み始めた『“小林よしのり『台湾論』”を超えて―台湾への新しい視座』(東アジア文史哲ネットワーク編)は面白い。
よしりん的誤解・曲解・こじつけは、何も彼固有の問題ではなく、アジア植民地問題を本質的に超えることができないでいる日本人総体の貧しい視座のあらわれということがわかる。
実証的な歴史学の立場からすれば、小林の本はほとんどデマゴギーのオンパレードに近いもののようだ。ただ、そこで切って捨てるだけでなく、よしりん的問題提起を批判的に受け止めつつ、狭隘な自尊史観に変わる新しい台湾論を提示しようとする、ポスト・コロニアリズムやカルチャー・スタディの若手の学究たちの作業は、刺激的で学ぶところが多い。
「いずれも最寄り駅から徒歩五分以内という好立地、無料朝食付き税込み七七七〇円という低廉な料金設定と、安心・清潔を重んじたサービスで、女性客のリピーターも多い。これまで鉄道沿線を中心に展開してきた生活関連事業が、沿線外に進出するわけで、将来は京王ブランドの新ホテルチェーンとして育てたい意向がある……」なんてことを某有名経済誌のタイアップで、むかし書いたことがある。その「新ホテルチェーン」とは「京王プレッソイン」のこと。例の耐震強度擬装物件で、建築主の京王電鉄も捜索の対象に。うぇーん、ごめんよぉ、ワシは擬装してるなんて知らなかったんだよ。しかし、これで京王の生活関連事業とやらは大ダメージだなあ。
忘年会シーズンでわけもなく飲んでいるのだが、ときに若い世代と一緒にカラオケというハメになることも。カラオケというものに対する感覚がまず違うのだとは思うんだけれど、それは置いておいて、たとえば、彼ら・彼女らの好んで歌う、浜崎あゆみとか、B'z とか…。
カラオケだから唄の素人臭さはおくとしても、そもそも楽曲としていかがなものか。そして、その日本語の詞はどうだろう。浜崎はまあ許すとして、B'z の楽曲と詞の凡庸さ・陳腐さはなんだろう。メロディラインにまず共感できないし、なんか「愛」とか「君」とかなんとかのキーワードをとってつけてコネくりまわしたら一つできましたって感じの歌詞にも、作り手の切実さが感じられない。これでよくヒットしますねぇ、というのが正直な感想。いや、こういう無味乾燥な詞だからヒットするのか。
音楽のセンスは、はるかに我々の世代よりは抜群のはずの彼女・彼らが、あんな退屈な歌を一生懸命唱っているのを見ると、実にもったいないなあ、と感じざるを得ない。誰か、B'z の詞の良さを私にもわかるように、解題してくれないか。
いや、別にいいんですけれどね。たかが流行り歌、我々の時代だって今から考えれば気恥ずかしい歌が量産されていたものだ。ビートルズだって、じっくり味わうべき歌詞なんて、実はそんなに多くはないんだからねぇ。
今年から FIFA World Club Championship と装いもあらたに。14日のサンパウロFCとアルイテハドの試合を観戦。この冬一番の冷え込みとかでガクガクブルブル。ただ、試合は3-2のスコアが示す通り面白かった。アモローゾ健在だ。客の入りは七分。
そもそも日本のクラブは出てないし、カズのシドニーFCは負けちゃったし、他に日本人選手はいないし、サプリサとかアルイテハドとか聞いたこともないし、ってんで、日テレ系が宣伝するわりには盛り上がっていない。ただ、その条件でも国立に七分の入りというのは、サッカー文化が成熟した証左というべきか。
日曜は横浜で3決と決勝戦観戦予定。リバプールがどこまでガチンコ勝負をやるかだな。
もし、正解が一つだけならば、全ての人の反応が理想的には同じになる。ところが、不確実な状況の下では、答えが一つではないから、人によって採用する「戦略」が異なってくる。人類全体から見れば、どうなるかわからない局面で様々な人が多彩な戦略(=感情の反応)をとるから、全体として生き延びて来られたのである。──「感情と個人差」日経夕刊「あすへの話題」2005.12.15一見、なるほどね、と思わされる論。みんなが同じ反応をするときは、危険だと、教訓化できそうな話でもある。だが、感情なぞそもそも持たない(と思える)下等生物が人類よりさらに長く生き延びてきた事実を考えると、急に説得力を失うんだけれども…。 とはいえ、このコラムの目的は生命の進化の秘密を解くことではない。同一の現象に対して人が自分とは違う反応を見せるとき、いちいち頭に来るのではなくて、「ああ、この人は不確実性に対して私と異なる戦略をとっているんだ」といい気かせれば、腹も立たないはず、という処世の術を述べているのにすぎない。 いわゆる「大人」の論理ってやつですな。こういう「大人」に、早くなりたいものよ。
14日の、強烈な寒さの国立競技場で懲りたので、18日の横浜国際=日産スタジアムでの3決、決勝戦には、先日を上回る寒波から身を守るための、かなりな重装備で出立。ズボン下というほどではないけれど、長めのパンツをジーンズの下に仕込み、毛糸の帽子をかぶり、腹と背にはカイロまで仕込んだのに、でも、足下が寒いよ。これって、もしかして新陳代謝の衰え=老化だろうか。ブルッ。
決勝戦。試合は最小得点差のまま推移し、勝利のための駆け引きが面白かった。シュートがバーに当たったり、再三にわたってオフサイドを取られたりと、リバプールにアンラッキーが続いたけれど、むろん場所を欧州に移してもう1回やれば勝てる相手だったとは思う。しかしながら、地の利や運を活かせるかどうかは、競技スポーツでは大事なことだからなあ。
それにしても、14日の国立といい、今日といい、周囲に「解説屋」のファンがいて、興を削ぐ。いや、かなり的確で辛辣なコメントだったりするんだけれど、解説を聞きに来たんじゃないのでねえ。サッカーとか野球って、これだけポピュラーだからこそ、観戦者が容易に評論家になりうるスポーツだと思う。むろん、観戦者と評論家と、さらには実戦家とでは、求められる責任に雲泥の差があるのだけれども。
そこまで言うなら「それならキミが日本代表監督」やってみなって。
ちょっと前まで、安藤美姫を持ち上げていたはずのメディアがここ数日は浅田真央一色。天才なの、このコ? 年齢制限でトリノ五輪の出場は無理だとわかっているのに、その報じ方がなんとも未練たらしい。特例措置を求める電子メール400通がバックになっているのだろう。「何がなんでも真央をトリノで見たいー!」とわがまま放題のロリコン男もいるしなあ。
今日の夕刊フジは、「規則は規則だ」と特例を認めない方針を語った国際スケート連盟会長を「かたくなだ」と批判。実は浅田真央のライバル視されるイタリアのアイドル選手というのがいて、真央を出場させることで、そのイタリア選手に「プレッシャーをかけるわけにはいかない」からなどと、「かたくなさ」の背景まで詮索している。
でも、これって詮索しすぎ。たんに一人のためにルールをいま変えるわけにはいかない、ということなんじゃないの。出場資格という基本のところでルールを崩しちゃったら、競技がただの興行になっちゃうでしょうが。
それに、いかに技術的に天才でも15歳じゃなあ。やっぱその〜、フィギュアスケートって、ある程度成熟した女性の肉体の優美さってのも大事なポイントだと思うんだけど──というのはただの私見ですが。
いや、そもそも五輪なんて興行に過ぎないのだから、こういうのがあってもいいのか。そのときどきで話題づくりができて、テレビの視聴率が上がって、広告効果がアップすれば、15歳だろうが、ペチャ××だろうが、なんでも特例で通しちゃばいいのか、という考え方もあり。
ま、この件はどっちでもいいです。
沖縄・那覇から東シナ海を航海し、27日基隆港に到着。翌日、台北に移り、本日(12/30)、列車で台南入り。特急じゃなくて急行に乗っちゃったので、5時間もかかったぜ。
仕事のメールは携帯で読めたし、台北ホテルのモデム通信がうまくいかなかったりで、これまで PowerBook では通信しなかった。台南のホテルは中級ビジネスだが、ADSLが部屋まで来ているので、心おきなくネット接続。
基隆は雨の街だからやむを得ないとしても、台北、台南とも、ずっと曇り。那覇からずっと何日も青空を見ていない。むろん東京よりは温かいけれど、全然南国らしくないなぁ。ま、食い物が旨いので許すか。
ということで、全国約×名の読者の皆様へ、旅先で健在のご報告まで。
_ tamachan [熱心な読者(その1)です。ご無事で何よりです。お気をつけてご帰国ください。 土産話を楽しみに待っております。]
この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。
_ まよ [台湾。そうだ、台湾行かれるんでしたね。良いなぁ〜〜〜。 でも沖縄から船でとか書いてらっしゃいましたよね、以前。 どん..]