新年ぐらい本を読まんといかんな、ということで、晦日から2日にかけて車中、実家で集中読書。
『バスクとスペイン内戦』狩野美智子/彩流社
秋のスペイン本集中購読の流れ。スペイン内戦時のバスクの政治状況についての研究書。法政の川成先生が主宰する雑誌に載せた論文が主だとか。ゲルニカ爆撃をめぐる当時のプロパガンダの状況など、まるで現代のセルビア、イラク空爆の状況と変わらない。マドリッドでみたピカソのゲルニカのより詳しい背景を知りたくなって、というのが手に取った動機だが、バスク初心者としては、もう少しバスクの民族・歴史がわかる本が必要かもしれない。
『「都市再生」を問う』五十嵐・小川共著/岩波新書
東京はほんとに「ブレードランナー」のような無機的な都市になりつつある。この本を読むと、六本木ヒルズはきれいだなあ、などと脳天気なことは言っていられない。しかしもうここまで来たらあと百年復旧は無理だべ。
『博士の愛した数式』小川洋子/新潮社
昨年の、川上弘美『センセイの鞄』を彷彿とさせる中高年純愛小説(といっていいか)。読後感はあくまでも静謐だ。ただ、もうちょい色欲があるぐらいが、わたし的にはフィットするのだが。江夏のいた時代の阪神タイガースの話が効果的に使われている。
『ららら科學の子』矢作俊彦/文藝春秋
前作「あ・じゃ・ぱん」に次ぐ長編。今回も長いけど、前作に比べたら半分。amazon.co.jpのレビューで、1)30代以下の方 2)長島の現役時代を知らない方3)訳者を問わず「ライ麦畑でつかまえて」は全くおもしろくないと感じた方 4)東京の土地勘が全く無い方 5)「タックスマン」におけるポールのベース・プレイといわれて何のことか見当がつかない方 6)「文化大革命」にこれまで一度も関心も興味もなかった方ーーには「面白くないでしょう」とあった。
俺も5は該当するけど、えらい面白かった。団塊小説と限定するのは実にもったいない。ただ、世代を超えてその意味を理解するには多少の努力は必要だろうけれど。矢作はたんなる冒険風俗小説を書いているようで、実は、人が国境を超えるということの根源的意味を問うているのじゃよ。
30年ぶりにみた東京が、まるでかつてのマンガに描かれたような陳腐な未来都市になっているという視点は、「都市再生を問う」に指摘された事実とも微妙に通底する。30年日本を拒否していたという位相の違いを設定しない限り、実は現代日本を描けないというジレンマ。
思えば昨年は映画館で観た映画って、もしかして一本もないのではないか、と思ってガクゼンとなる。おっさんが一人で映画館へとなるとなかなかタイミングが難しい。かといって、GFと映画を見に行くとその後、感想をめぐってたいてい喧嘩になるしなあ。
というか、いつ頃のことか映画新作情報ってのがピンピンと入ってこなくなったのだ。「あれ、観た?」「どうだった?」みたいな会話の輪が周辺から消えてしまったのだ。かつての映画好きの青年たちよいま何処? 簡単にいえば俺の映画情報感度の低下というにすぎないんだけどさ。昨年話題の『ボーリング・フォー・コロンバイン』もやっと観たのは昨年暮れのCSで、だものなあ。
今年もそんなに封切館には行けないと思うけど、少なくともビデオ・DVDで鑑賞しつづける態度は維持したいものだ。映画なんて、封切り後、ビデオ化までの半年、1年ぐらい後に観るのが賞味期間的にちょうど食べ頃なのよ、という言い訳をしつつ。
というわけで、正月の間、後れ馳せに観たのが、『ソラリス』(ソダーバーク監督)『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル 』(アラン・パーカー監督)『スパイ・ゾルゲ』(篠田正浩監督)の3本。
『ソラリス』については、製作のJ・キャメロンが「これは過去の映画のリメイクではなく、原作の新解釈による再映画化だ」というようなことを言っていたが、たしかにその意気込みはよくわかるけれども、もう少しタルコフスキーに敬意を表するべきではないか、と思った。より広い哲学的思念がソダーバーク版にはやはり欠けていて、個人的な心理葛藤映画になってしまっている。でも、ジョージ・クルーニーのシリアスな演技に免じて、星5つ満点で★★★。
『デビッド・ゲイル』は死刑廃止もののサスペンスということだが、このテーマ自体はよくあるもので、もはや珍しくはない。死刑執行の時間に反対派と賛成派がデモをしかける風景というのも、テキサス州あたりでは実際その通りなのかもしれないが、なんだか別の映画で観たのとそっくりで、ちょっとうんざり。
サスペンスというにしては、途中でおおよその結末が分かってしまうのもいただけないしなあ。主人公のケビン・スペイシーがやはりどうしても悪人には見えないし、その勘を頼りに映画を観ていけば、結論は自ずから読めるというわけだ。ケビン・スペイシーはたしかにたいした俳優だと思うけど、やっぱりエキセントリックな知的犯罪者っていう役回りが似合っている。『セブン』のシリアルキラー役が俺的にはベスト・パフォーマンスだと思う。
それにしても、かつて『ミッドナイト・エキスプレス』を撮って当時の若者を熱狂させた伝説のアラン・パーカーも、やはりふつうに年取ったというべきなのだろうか。DVDだとメイキング・フィルムやカット・シーン、監督による解題なんてものがおまけについてくることがあるが、これはやっぱり観ないほうがいいなあ。だって、そこで監督がやっているのは、言い訳と自画自賛にすぎないんだもの。(★★)
『スパイ・ゾルゲ』は、よく撮りましたねえというのが率直な感想。篠田正浩のドラマツゥルギーはもしかしたらもう時代遅れかもしれないが、史実と自身の解釈をケレンミなくたんたんと、しかし飽きさせずに力強く描くパワーに脱帽する。最後の映画だと思って、けっこうリキ入れたかな。
しかし、俺としては、この映画ではゾルゲや尾崎秀美よりは、脇役のブーケリッチや宮城与徳のほうに、エピソード的には興味を覚える。とりわけ、ブーケリッチと妻・山崎淑子の話は94年11月の朝日新聞の記事以来、強い印象で残っている。そのとき紙面に載った山崎淑子の若かりし頃の写真があまりに美しいので驚いたということもあるのだが。映画はもしかしたらこの記事を踏まえているのだろうか、二人の出会いのエピソードなどはその通りに描かれていた。
宮城与徳のことをネットで調べていたら、一橋大の加藤哲郎教授の旧ソ連日本人粛清犠牲者リストというのに行き当たり、国崎定洞らの話にしばし読みふける。ゾルゲもまたモスクワからの召還に応じていたら、そのまま銃殺かラーゲリ行きだったことは確実だ。絞首刑の直前にゾルゲは「国際共産主義万歳!」と叫んだとされるが、映画ではその後に、ソビエト崩壊後に人々によって倒されるレーニン像を映し出す。それはストーリー的にはなくもながだとは思うけれど、歴史の悲劇と皮肉ということを、篠田は言いたかったのだろう。(★★★★)
どうやら風邪をひいたみたい。一昨日の夜に風呂上がりでうたた寝したのが原因だろうな。昨日の昼まではなんともなかったのが、取材から帰ってきてちょっとお昼寝して起きたら喉が痛い。で、昨日の後半は結局薬を飲んで休養。今朝になって喉の痛みはひいたが、今度は鼻水。だらだらと寝て起きて、少しはよくなった。食欲はあるんだが。
その間も電話はいくつかあって、新潮のKさんからは「なんかネタない?」。これが噂のK電話か。小さな出版社に再就職したT氏からの久しぶりの電話は、新しいお仕事の話。夕方、仕事で近所に来たといって兄が来訪。実家の両親の状態や甥っ子の就職の話など。次男坊のために古いスキャナーを持って行ってもらう。
うーん、原稿を書かないといけないんだがなあ、頭がぼーとなっていて、鼻水ぐじゅぐじゅ。だめだあ。
今日の言葉ーー「魂消る」なんと読むのか一瞬わからんかった。
風邪、なんとか復調に向かっているが、しかし今回はけっこう強烈だった。それともこっちの抵抗力が格段に落ちているんだろうか。咳き込むと胸が苦しく、ぜーぜーと風切りのような音がして、肺活量が半分ぐらいになった感じになる。タバコ、止めないとなあ。
結局、土曜日の高校時代の仲間の同窓会は欠席。
あの件、どうなっているんかな、という仕事が2つほど。四谷方面の仕事は、ま、こちらから催促する筋のものじゃないんだけれど、急に日程入れられても困るんだよねえ。いっそのこと、ナシにしてもらってもいいんだけれど、そうなるとこれまで出来ている原稿にかなり手を入れないといけなくなる。
もう1件のほうは、2月の仕事というふうに考えていいんだろうか。ま、あんまり深くは考えない、つーことで。
小石川で、B誌の若い編集たちと飲む。T氏のところで麻雀をやっていたんだとか。そのうちの一人、T嬢がまもなく離婚するっていう話。オレが「考え直したほうがいいんじゃない」って言ったら、「バツイチの人には、言う資格ありません」って。アハ。そりゃ、そういう資格はないけどさ。何があったかはわからんが、しかし、この業界、離れるのが多いよなあ。結局、TinyPlace で朝3時ぐらいまで飲んだかな。いきおいで全部奢ってしまった。
_ ばついち [離婚って「学ぶものは多いけど得るものは少ない」からなぁ。]
ボローニャ移籍第1戦を観て、「ナカタ復活と言ってよいかどうかは、もう1試合見ないとなんとも」と思ってはいたが、早くも結果が出た。中盤の王としてゲームを完全にメイキング、左右に振り分ける効果的なラストパス、中盤の底から一気に攻め上がるドリブルーー強雨とぬかるみの最悪のコンディションだったが、ナカタの周りだけ、まるでペルージャ時代の颯爽とした風切り音が聞こえているようだった。
真ん中のポジションはやはり視野角の広いナカタにはうってつけなんだろう。パルマではいかに窮屈にプレイしていたかが、あらためてよくわかる。チームはこれで今年に入って3連勝。
■ スペインではわがベティスが、R・マドリッド相手にマヌエル・ルイス・デ・ロペラで大健闘。後半15分までの1ー0のリードは、ロナウドの憎たらしいシュートで追いつかれたものの、それでも終始攻撃的な姿勢で逆転を許さず。右サイド、ホワキンの爽快なぶっちぎりプレイも久しぶりに堪能。ロナウドは仕方がないとして、フィーゴとロベカルを体を張った守備でほぼ完璧に抑えることができたのがドローの要因の一つ。ベティス、やっぱりいいわあ。
なんだか来た仕事を全部受けている間にだんだん忙しくなってきたな。月内に地方取材があと2件、某大手ソフト会社のPR誌とかも、それに初めてのサッカー関連のお仕事も。といっても、ゲームそのものにかかわる話じゃないんだけれどね。考えてみれば、オーダーしてくるのはみんな古いR系の人脈ばかりなんだなあ。そ、人脈で動くんだ、この業界。ともあれ、風邪ぶりかえさないようにしなければ。
朝、新幹線に乗って三河安城。駅に着くなり寒風。こんな寒い街だったっけと思ったが、今日は全国的に寒波襲来とか。プラスチック・リサイクル・プラントの会社。帰りに駅弁「びっくりミソカツ」というのを買って車中で食す。温かいと美味かったんだろうけど。土産はきしめん。別に安城で買わなくてもよかったな。
6時過ぎに戻ってきて、メールの処理やらなにやら。9時ごろから一文寿司。よく見かける常連の人と、初めて会話を交わす。けっこうよく喋る男だった。
もう1月も終わりじゃないか。今週は、某大手ソフトのPR誌の取材が立て続けに入って予定が大幅に狂った。こんなに密に入れられるとは思わなんだ。でも、SI業界の次期リーダーと目される切れ者や日本のゲノム研究の権威のお話を拝聴できたのは、ラッキーというべきか。
最近、おじさん、おばさんたちとの飲み会のお誘いが多い。ただ17日予定のはできたら遠慮したいなあ。某おばさん広告営業に、いいとこの学校に行っている子供の話とか聞くのももう飽きたし、某独身おばさん編集者に「カラオケ、ほんと下手ですねえ」とかあからさまに言われるのもむかつくし。
この日記について、筆者は必ずしも内容の信憑性を保証するものではありません。あしからず。
_ fj [日本のアニメ、特撮は(^_^;)?]